第3章 もう1つの出会い

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かなり、昔に遡る。 私は、短大を卒業して東京のど真ん中、丸の内でOLをしていた。 まだバブル崩壊前で、金銭的にもかなり贅沢な時代だった。 そんな中、学生時代もOLも、そこそこ楽しい時を過ごしていた。 短大時代に友人の紹介で知り合った彼とは、結婚の約束もしていたし、将来の不安もなく、腰掛OLそのものだった。 ただ、本来真面目に育った為、仕事はきちんとこなしてはいたけれど。 彼は、日本料亭を継ぐ跡取りで料理の研究をしていた。 私の一番好きなこと! おいしいお料理を食べること! 私は料理も好きだったから、私達は2人で美味しい料理を食べに行くことがデートの定番になっていた。 私達はそこで食べた美味しい料理を再現するのが楽しみだった。 いつか二人で、日本料亭を継いで、こうゆうお料理を出そうとか、こうゆう接客は素晴らしいなんて夢を語り合っていた。 彼は、見た目にもけっして誉められた人ではなかった。 でも、共通の趣味と彼の素朴な所が5年と言う月日、別れ話もなく、このまま結婚するものだと思っていた。 私自身、顔も体型も自信はないし、彼といると似た者同士でホッとしていた。 私の母方の親戚は皆美形揃い。 芸能界にスカウトされたり、モテすぎの武勇伝を親戚が集まるとしていた。 私は父方に似た為、目も細く小太りだった。 小さい頃から美人で自慢の母には、パパに似ちゃったけど、女の子は愛嬌と明るさと優しさが大切だと言われて育って来た。 だから、自分から人を好きになっても私なんか相手にされないと恋をするのも躊躇っていた。 だから、彼とのつき合いは私にとっては好き嫌いではなく精神的にバランスのとれた間柄だったのだと……。  今ならわかる。
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