第4章 骨折…心も折れて…

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月日が流れて、桜5歳。 可愛く元気に育った桜も、幼稚園の年中さんになった。 主人とは相変わらずだが、娘の成長と共に会話も生まれ、育児や幼稚園の行事、必ずやらなければならない役員などで、忙しい中でも充実した毎日を過ごしていた。 その日も幼稚園のお迎えの後、ちょっと遠いけど散歩がてらに新しく出来たスーパーに買い物に行こうと、桜と出掛けた時だった。 一瞬の隙に、手をすり抜け走り出した桜。 車に引かれそうになり、外でクリスマスの飾り付けをしていた接骨院の院長先生に助けて頂き、急死に一生を得た。 はずが……。 何故私が骨折してしまったんだろう……。 主人に怒られながらも、動けないものは仕方ない。 主人と相談をして、ちょうど幼稚園は冬休みに入るし、通院は整形外科なら週一回位、主人の土曜日の休みに合わせて通える。 レントゲンもあるし整形外科に通う様に言われた。 また、助けてくれた接骨院には、翌日菓子折を持ちお礼に行くと決めた。 翌日、主人の帰宅を待ちギプスで固められた足をビニール袋で包み込んで、接骨院に挨拶に伺った。 硝子越しに私達家族の姿が見えると、院長先生は微笑みながら走り、ドアを開けてくれた。 「骨折だと中尾から聞いてます!大丈夫ですか?」 また少しかがんで首をかしげニコッと微笑んだ。 ドキン! 今まで感じた事のない、恥ずかしさが込み上げて来て下を向いて、 「大丈夫です。」 それしか言えなかった。 きっと、転んだわけでもない私が骨折して、なんてバカなやつだと思われてるだろう……。 そんな事を思い、高鳴る鼓動は恥ずかしさのせいだと思ってた。 ただ、骨折した日より強く感じる包まれる様な温かい空気。 重力がなくなった様なふわぁっとした感じ、自分が透けた様な感じは不思議だった。 その時、桜は、 「先生~~~ありがとう。」 と足元に抱きついていた。 あんまり人に懐かない桜がくっついているのに、ビックリ! まぁ命の恩人だもんね。 そんな短めやり取りの後、主人が 「大変ご迷惑をかけました。娘の命を救って下さり、ありがとうございます。これつまらないものですが、皆さんで召し上がって下さい。」 と菓子折を差し出した。 主人もかなり大きい人だと思っていたが、先生はもっと大きく白衣姿が眩しく見えた。
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