第4章 骨折…心も折れて…

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この頃から自分の気持ちのざわめきの正体に頭でセーブが掛かった。 これ以上は無理。 だから他の先生を望む様になった。 他の先生の日は、胸のざわつきも無く、治療に専念出来た。 なのに、トレーニングの足が重い、硬い。 他の先生の施術を受ける度、院長先生の魔法の凄さを感じた。 隣の施術台で院長先生が他の患者さん達との談笑が聞こえたり、また明らかに院長先生を好きなんだなぁと感じる患者さんも居て、治療に専念出来ても帰り道は笑顔どころか溜め息しか出ない様になっていた。 「はぁ~~~。」 ため息をもらす私に桜は、 「ママどしたの?痛い?大丈夫?」 と聞いた。 「うん……。」 家に帰っても笑顔になれなくて、桜に何度となく心配された。 少しづつ、筋肉がついて来たある日。 ギプスシャーレを外して自分の足で立ち、松葉杖を外して歩く練習になった。 施術や治療方法が変わる初めは必ず院長先生になる。 嬉しい様な苦しい様な複雑な心境のまま歩く練習が始まった。 「じゃあ、座った所から立ってみましょうか?」 久しぶりに、あのかがみこんで首を傾げて微笑んむ院長先生を見た。 ドキン ドキン 呼吸が苦しくなった。 立とうとしたけど、立てなかった。 骨折後、体重も5キロ以上増え、その前から小太りだった私はただでさえ筋肉が落ちていて足云々より体を支える事が難しかったのだ。 しゃがんだままの私を見て、院長先生は両腕を広げて、 「はい!」 と目の前に大きな大きな手を差し伸べてくれた。 自分の体重も恥ずかしいけど、院長先生の手に自分から触れるなんて出来ないよ。 「あの……大丈夫です。1人で立てます。」 必死に自分で立とうとしたが、やっぱり立てない。 情けない気持ちでしゃがんだままの私。 (まるで雪だるまだわ……。) 外は雪が降っていた。 「はい!つかまって立ってみよう!」 院長先生が私の手をつかんで、引き上げた。 「あっあの……あの……私重いので……。」 真っ赤になるのがわかって、40過ぎのおばさんなのに……、何照れてるのと思われちゃうじゃない! もう自分が嫌で穴があったら入りたかった。 院長先生は、 「大丈夫。重くないですよ。大塚さんよりもっともっと大きな男の人も支えてるし、大塚さん太っていませんよ。あはは。ほらっ!」 ギュッと手を握り、立たせてくれた。
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