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「さくら~~~ぁ!!!」
繋いでいた手を振りほどき、突然走り出した娘を見て、私は思わず叫んだ。
キキ~~~ッ!
私は走り来る車に飛び込んで娘を助けた……。
つもりだった。
私の腕は娘に届かず……。
私は、その場で目を閉じた。
「うわぁ~ん、ママァ~~~!」
「さくら?」
目を開けると、そこには白い大きな固まり?
娘の姿は見えないけれど……。
車はその少し手前でギリギリ止まっていた。
運転をしていたおばさんも真っ青になって車から降りて来た。
「大丈夫ですか?」
運転をしていたおばさんも震えていた。
私も呼吸が上手く出来ない位震えていると……。
「お母さんかな?娘さん無事ですよ。お車の方も、お子さん無事ですよ。」
穏やかな柔らかい声と共に、白い大きな固まりが立ち上がり、振り返った。
ふぁ~っ。
風が流れて来た。
まるで自分が透明になった様な不思議な感覚を覚えた。
すぐ我に返りその白い大きな固まりは、男の人の白衣だと気付いた。
白衣の人の腕には、愛娘が大事そうに抱きかかえられている。
「うわわぁ~~~ん。」
泣きじゃくる娘を、震える体を必死に抑え白衣の人から受け取り、ギュッと抱きしめた。
「あっ、ありがとうございます!」
「突然飛び出して、本当に本当にすみませんでした。」
車を運転していたおばさんにも、深々と頭を下げお詫びした。
「無事で良かったわ。」
おばさんは幾分震えも収まり、落ち着きを取り戻し笑顔で答えてくれた。
車にはぶつからずにすんだ事にお互いにホッとしながら、助けてくれた白衣の人にお礼を伝えた。
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