第2章 出会い

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「あの、娘を、娘を助けて頂いてありがとうございます。」 深々と頭を下げ、娘を抱く温もりに安堵しながら、助けて下さった白衣の人を見上げる。 身長は180㎝をゆうに上回るだろうか……。 まだ年若いお兄さんだった。 ニコッ。 白衣の人は、大きな二重の目が三日月の様になり、口角がキュッと上がって、少し高めの柔らかい声で、 「無事で、何よりです。」 と、少し首を傾げて笑った。 また、ふぁ~っと風が吹いた。 12月、クリスマス間近……。 雪が降りそうな位寒いのに、何故か温かく感じた。 気持ちが落ち着いて、腕に抱かれた娘に、 「なんで、ママの手を離して走ったの?ダメじゃない!車に引かれたらどうするの?」 と、声を荒げると……。 娘は、 「あのね、ピカピカのお星様とサンタさんが居たの。」 と、指差した。 娘の指差した先には、確かに大きなツリーと動くサンタクロースの人形があった。 「じゃあ、僕も謝らなきゃね!今、あのツリーとサンタクロースを置いてたのは、僕だから!」 白衣の人は、まだ泣き止まない娘にウインクしながら、イタズラっ子の様な笑顔を向けた。 娘は、その笑顔にまだ涙で濡れた瞳のまま、ニコッと笑った。 娘に、怪我がない事を確認して、運転手のおばさんも白衣の人に挨拶をして運転をして帰った。 おばさんにも、申し訳なくて深々と頭を下げて車を見送った。 白衣の人も仕事中の様なので、改めてお礼をさせて頂こうと考えながら、一旦帰ろうと思い挨拶の為に、白衣の人に向き直った。 その途端、ズキンと足に激痛が走った! そのまま、娘諸ともしゃがみこんでしまった。 白衣の人が、片手で娘を抱き上げながら、もう片方で私を支え言った。 「あの、ツリーまで歩けますか?あそこ、僕の経営する接骨院なんです。良かったら診察しますよ?緊張したのと、安堵から力抜けたんじゃないかな?」 何から何まで申し訳ないと思いながらも、あまりの痛みにお願いする事にした。
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