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「あっ、あの~。これ以上ご迷惑掛けられないので、タクシーで行きます。」
と言うと、
「僕の見立てが正しいか確認させて!まだ開業したばかりなんだ。だから、気にせずに!本当は僕が着いて行けたらいいんだけど、患者様が待ってるしね。」
と言いながら外の駐車場で待つ患者様を見つめていた。
また、ふぁと風が吹いた。
それから、テキパキと紹介状とおぼしき書類を用意し受付さんに渡した。
まだ、申し訳なさで、ぐずぐず言う私に、
「大丈夫。これは僕のおせっかいだから気にしないで!」
と満面の笑みを向けて、私と娘を車まで運び、白衣の人は、午後の診察開始の札を掲げた。
「あのっ、診察代を……。」
診察代をお支払しようと、お財布を出した。
「あはっ。いらないですよ。」
両手を振りながら白衣の人は笑った。
「えっ!でも……。」
「今日は診察室にも通してないし、僕のせいで大切な娘さんが事故に会う所だったから。ねっ。」
首をかしげて覗き込む様に、大きな大きな白衣の男の人は微笑んだ。
しばらく押し問答し、診察代なんて取れないと、頑なに拒まれ……。
これ以上仕事の迷惑にはなりたくないので、後でお礼に伺う事を胸に決めた。
「何から何までありがとうございます。お言葉に甘えて、またお礼に伺わさせて頂きます。」
手短にお礼を伝えた。
「いえ。お大事に。またお待ちしていますね。」
今日見た笑顔の中でも最高の笑顔で、にっこりとほほ笑んだ。
途端に恥ずかしくなり、下を向いてしまった。
恥ずかしさを隠すように、
「ほら、桜!お礼と挨拶は?」
と言うと、
「お兄ちゃんありがとう。またね。」
と手を振った。
白衣の男の人も、高い身長をかがめて、桜と手をタッチして笑顔で手を振った。
また、温かい風が吹いた。
その後、受付さんの運転する車で整形外科に向かった。
整形外科での待ち時間に、あの接骨院の受付をされている中尾美樹さんと沢山お話をした。
白衣の男の人は、35歳で院長先生として、あの接骨院を経営されてると言う。
名前は、遠山広夢さん。
「あの歳で、柔道整復師・あんまマッサージ師・鍼灸師、資格いっぱいなんですよ~。」
中尾さんは、少し顔を赤く染めて話していた。
「凄いですね。」
なんとなく、中尾さんは院長先生がお好きなんだろうなぁと感じた。
お似合いだなぁと……。
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