第9章 真夜中のシンデレラ

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それからは、主人にも優しく接していた。 でも、まだ院長先生への思いは私の心を絞めつけていた。 会いたい。 会いたい。 会いたい……。 1人になると、ふと、涙が溢れ落ちる。 苦しい。 この思いを止めて欲しい。 ある日、主人にお願いした。 「ぎゅ~~~って抱きしめて。」 と……。 主人は、 「はあ~~~?何エッチしたいの?」 と、笑った。 「違う!服着たままで、ぎゅって抱きしめて欲しいの!」 真剣な眼差しで訴えた。 主人は馬鹿にした面持ちと、声で、 「いいババアが何言ってんの。キショイ!アホ!」 と取り合ってくれなかった。 でも懇願したら……。 「んじゃ、エッチさせてくれたらね。」 「違うよ!ただ抱きしめて欲しいんだよ!」 「ずっと、してないじゃん!」 「熱あるの!具合悪いの!寂しいの!」 「すぐ済むって!」 私は、1日も早く院長先生を忘れたかった。 この想い全てを忘れたかった。 私は主人の妻。 これは当たり前。 承諾して、潔癖症の主人に言われるがまま、シャワーを浴びた。 熱に震えながら……。 そして、行為が終わった後、抱きしめてくれるかと思ってたのに、 「早くシャワー浴びて!」 と、潔癖症の主人は即シャワーが当たり前。 服着たままで、ただ優しく包み込んでもらいたかったのに……。 女扱いはしないのに、はけ口だけを求めるの? 私はね。 体ではなく、心の繋がりが欲しかったのに。 まるで、人形だよ。 そんな事を考えていたら、主人はしびれを切らしたのか、私の胴を蹴ったのだ! 「早く、シャワー!」 抱きしめる所か蹴ったのだ。 院長先生助けて……。 苦しいよ。 忘れたくて、私なりに精一杯頑張ったんだよ。 でも、私は一生女扱いしてもらえないの。 なのに、人形の様に抱かれるだけ。 心がガラガラと音を立てて崩れ落ちるのがわかった。
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