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「遅かったね…。たかだか髪切るのに。 本当に頭切ってきたら良かったのに。」 妻は虫の居所が悪かった。 今に始まった事ではない。 「いやあ、床屋混んでてさ。」 「領収書、出して。」 「え?ないよ?」 「じゃあ財布見せて。」 こうして、着服がばれ、夕飯は抜きになった。 この理不尽さも今に始まった事ではない。 こいつを自分の中から抹消してしまいたい。 知り合う前からの記憶すら消したい。 俺の人生に、こいつがいなかった事にしてしまいたい。 そう思いながら床に就く夜も、今までに数え切れない程あった。 今日の床屋に行けば、何とかなるかも。
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