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そして、今に至る。
観光客に混じり、歴史ある神の遺物に睨みをきかせていると言うわけだ。
すぐ横にいた上品な老婆が、いきなりわっと泣き出した。何事かと思ったら、ガラスのショーケースに入ったブローチに、手を合わせて一心に祈りを捧げている。ありがたや、ありがたや、とか言いながら。
フェルディナンドは面食らってしまったため、装飾品が飾られているスペースをあとにして、回廊を先に急ぐことにした。
滑り込んだ次の部屋は、少々暗がりにあって、石の壁に歴代国王の肖像画が飾られている。
17枚。
一番右端にあるのは先ほど謁見したばかりの現国王。やや緊張した面持ちで、絵の中に収まっている。その横の肖像では、画家の方が緊張していたのか、やや筆が震えた跡がある。肖像の顔を眺めると、口角は笑っているが、残忍な輝きを放つ瞳、大きな鷲鼻。王座の肘置きに置いた太い腕を起き、いくつも派手な指輪をはめている。現国王の父親、暴君だったと噂される、16代目オルフェ王だ。
しかし、所詮はある国の歴代国王の肖像画というだけで、他には報告書に特筆すべき点は見当たらなかった。
8代目、今から3百から4百年前の国王が、他とは違う容貌だったというぐらいで。
他の国王と比べて大分若い。自分と同じ20代後半から、30代前半くらいであろうか。別にそれは不思議ではない。時代背景によっては、若いうちに即位するということも十分有り得るからだ。
フェルディナンドが気に留めたのは、王の太陽のような金髪だった。ほかの肖像画はもちろん、城下町や神殿にいる現地人の中にも、一人も金髪は見かけなかった。
自分の淡い色とは違う、太陽のような輝く黄金。
希少種か、突然変異か、よそ者か。
いや、浅黒い肌と顔の作りを見れば、よそ者ということはないか。
もしそうだったら国王になれるはずもない。
凛々しい瞳は輝いているが、その奥には苦悩の色が見える。
意志の強さを感じられる口元。
それは固く結ばれているが、何か言いたげなようにも見える。
フェルディナンドは首を振った。
考えすぎだ。
あるかどうかも分からない、間違い探しに躍起になりすぎて、
どうやらひどく疑心暗鬼になっているらしい。
まとわりついた考えを押しのけるように、指で眉間のしわを伸ばす。
17枚の肖像画に再度一瞥をくれると、回廊の先に進んだ。
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