スフィアローゼ

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足元を見ると、今立っている踊り場にも薄緑色の石がちらほら存在する。 進むべき道を見上げると、神殿と王の住む宮殿がやっと頭だけ見えてきた。 その後ろにそびえ立つのは、アスラ火山。 「ごらんよ。あれが黄金の柄杓だ」 黄金の柄杓。伝説にある、神が振り下ろし、地中に埋め込まれたというあの伝説の柄杓は、アスラ火山だと言われている。 壮大な火山は下部分は緑色で覆われているが、天辺のカルデラは大地がむき出しとなっている。どうやら水蒸気噴火が起こっているようだ。上方から煙が上がっている。 横を見ると商人は膝を付き、目を閉じて祈りの体勢を取っている。 「神様の偉大なる力を分けてもらおうと思ってね。商売繁盛、金運上昇」 そんな邪な願いも叶えてもらえるものなのか、フェルディナンドはそこには触れずにおいた。 「それならば、頂上で祈ったほうがよかろう」 神殿の裏側まで大回りすれば、火山は裾から頂上まで見える。ここから半分見上げるぐらいじゃ、ご利益も半分だろう。 男はまた例の大げさな動作で首を振る。 「あんた分かってねぇなぁ、あと300段も登ったら、足はがくがく」 男は自分の膝をぴしゃっと叩く。 「膝ついて祈りを捧げることなんかできやしねぇよ」 よっこらしょ、男はそう言ってまた石段を登りだす。 フェルディナンドは再度広がる大地を見渡す。 大河、森林、肥沃な土地…。 4度目のため息は飲み込み、代わりに大きく深呼吸した。 この国でやれるだけのことをやる。それが今回の任務だ。 しゃがみこんで靴紐が固く結ばれていることを確認すると、 男に続いて石段を登り始めた。
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