5

2/21

1183人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
『俺、果名のこと好きだからね。』 そう言ってくれたあの日以来、宮瀬さんは来社しなくなった。 今日も暇ができると、携帯が鳴るのを待ちわびてしまう。 メールでも何でもいいから、宮瀬さんと繋がっていたくて。 千紘には、自分から連絡しないとダメなんじゃないかと言われたけど、とてもその勇気はない。 由哉と離れて2ヶ月が経って、一時は実家に戻ったけど、最近また一人暮らしを始めた。 今日で20日目。 もしかしたら、宮瀬さんがいるかもしれないから。 追いかけたりしない方がいいかもしれないって思うのに、そう簡単に諦められなくて。 彼がいそうな場所に来ては、私の痕跡だけを残す。 同じソファー席。 ソイラテとミルクレープ。 カバーを外した小説。 お互い好きなのに、恋に落ちない運命。 そんな恋愛小説を読みながら土曜の午後を過ごすけど、宮瀬さんのことばかり考えてしまって、ページが進まない。 〈あなたは運命の人ですか?〉 読んでいる小説の主人公が、恋の相手に問いかけている。 こんなストレートな言葉、現実にはとてもじゃないけど言えないよね。 いくら好きでも、伝えることが許されない恋だってある。 順調にハッピーエンドへと向かう主人公が羨ましくて、余計に気持ちを募らせてしまう。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1183人が本棚に入れています
本棚に追加