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『俺、果名のこと好きだからね。』
そう言ってくれたあの日以来、宮瀬さんは来社しなくなった。
今日も暇ができると、携帯が鳴るのを待ちわびてしまう。
メールでも何でもいいから、宮瀬さんと繋がっていたくて。
千紘には、自分から連絡しないとダメなんじゃないかと言われたけど、とてもその勇気はない。
由哉と離れて2ヶ月が経って、一時は実家に戻ったけど、最近また一人暮らしを始めた。
今日で20日目。
もしかしたら、宮瀬さんがいるかもしれないから。
追いかけたりしない方がいいかもしれないって思うのに、そう簡単に諦められなくて。
彼がいそうな場所に来ては、私の痕跡だけを残す。
同じソファー席。
ソイラテとミルクレープ。
カバーを外した小説。
お互い好きなのに、恋に落ちない運命。
そんな恋愛小説を読みながら土曜の午後を過ごすけど、宮瀬さんのことばかり考えてしまって、ページが進まない。
〈あなたは運命の人ですか?〉
読んでいる小説の主人公が、恋の相手に問いかけている。
こんなストレートな言葉、現実にはとてもじゃないけど言えないよね。
いくら好きでも、伝えることが許されない恋だってある。
順調にハッピーエンドへと向かう主人公が羨ましくて、余計に気持ちを募らせてしまう。
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