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『いつも通りにしてんだけど。果名が意識し過ぎなんじゃない?』 『そ、そんなことないっ!』 『ふぅーん。』 由哉の左腕が、私の腰をグッと抱き寄せる。 『松崎さん、来ちゃうよ。』 『来ても、俺は困らないけど?』 そんな筈がないのに、強気で言う由哉に圧倒される。 『お連れの…。』 『中山先輩が来るときは、俺に電話が入る。』 『……。』 何も言わなくなった私の視界いっぱいに、由哉が映り込んでくる。 室内に響く、キスの音。 『果名、誘ってんの?……その顔。』 まだ僅かに触れる唇と吐息が、由哉との距離を感じさせる。 空いた手で制服の上から胸に触れられて、私は息を飲んだ。 タイミング良く震える胸ポケットに入れた由哉の携帯電話。 『はい、青木です。』 私は、そそくさと身なりを整えて部屋を後にした。 『はぁぁぁー。』 本当に〈は〉と〈あ〉が文字になって口から出てるんじゃないかって思うくらいの深い息を吐く。 由哉のバカ。会社であんなこと、しないでよっ。 もし誰か来ていたら……と思うと、背中がゾワッと粟立った。 でも……本当は嬉しかった。 何だかんだ言って、付き合いたての頃から変わらずに愛してくれる由哉に、文句はない。 このまま結婚するのも、悪くないって最近考えてる。 まだ由哉は早いと思ってそうだけど……。 幸せな考え事をしながら、受付に戻った。
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