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『果名、ミルフィーユ落ちそうだけど。』
フォークに乗せたままの一口を、英絵が心配そうに見ている。
『あ、ごめん。なんか疲れてるのかも、私。……で、なんだっけ?』
無理やり作った笑顔は、自分でも引きつりそうな感じが手に取るように分かって、逆に気持ちが落ち込んでいく。
好きな人が、他の女性といるという事実に打ちのめされそう。
片想いとは勝手なもので、宮瀬さんの隣にいるのが自分じゃないと嫌なんだ。
自分のことは棚に上げたくなる。
少し前までは……自分の気持ちがまだ由哉にあった頃は、そんなこと思わなかったのに。
次、いつ会えるのか分からない。
前みたいに、いつでも連絡してねって言ってほしい。
きっともう、それは叶わないから……。
望んでも無理なことに変わってしまったのだと、自分に言い聞かせているのに。
私が視線を送ったその先で、宮瀬さんも私のことを見つめていて。
そして、あの日みたいに人差し指を唇の前で立てて微笑んでいる。
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