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『あーぁ。終わっちゃったよ。』
数分前に、終わってしまったクリスマス。
由哉(ユウヤ)と待ち合わせをしている私。
疎らになった通行人は、1人待ち続ける私を見て通り過ぎていく。
今年は、由哉の仕事が多忙を極めているらしく、クリスマスの夜からデートする約束をした。
…したけど。
来ない。それどころか連絡1つない。
本当は嫌だったんだ。
『クリスマスは世の中24日から始まってるの!25日の夜なんてイヤ。』
そう言いたかったけど、言えなかった。
クリスマスになった瞬間から付き合い始めた私たちにとって、大切な意味のある日。
由哉がそれを分かっている上で、仕事があると言っているのを感じたから、理解を示した。
しんしんと降り積もっていく雪と共に、私の心の中には、寂しさと不安が積もっていく。
街のイルミネーションも、少しずつ存在を消していく。
待ち合わせ場所にした、大きなクリスマスツリーのイルミネーションも、あと1時間もしたら消えるだろう。
『もしもーし。』
鳴らない携帯に、呼び掛けてみたりして。
タイミング悪く通ったカップルには、クスクス笑われる始末。
もう、最低。由哉のバカ。
早く来てよ……。
これ以上、ただ通りすがっただけの人に可愛そうな女の子と思われたくなくて俯いたら、涙が出そうになった。
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