はじまりの夜

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『っはぁ……ごめんっ、果名。』 駆け寄ってくるなり、ブン、と音がしそうなほど由哉が頭を下げて謝ってきた。 『ごめん、本当。待っててくれてありがとな。』 後ろ手に持っていたサンタからの小さな箱を、咄嗟にコートのポケットに隠した。 何も言わない私を、由哉がぎゅっと抱きしめてくれる。 さっきまで絶対に許さないつもりだったけど、怒っていたことなんか由哉の体温で溶けて無くなっていく。 甘いなぁ、私。 でも、由哉はいつでも約束を守ってくれているから、信じて待っていられたんだよね。 私の我慢が、足りなかったのかな。 『あ……。』 由哉が身体を離したら、クリスマスツリーのイルミネーションが消えた。 『真っ暗になっちゃったね。』 赤信号とポツンポツンとある街灯だけが辺りを照らすと、日常の光景に近付いた。 由哉が見てる私は、まだムッとしてるはず。 本当は怒ってないけど、簡単に許すのが悔しくて…精一杯の仕返し。 『……怒ってる…よな?』 『……怒ってた。』 『……?』 一瞬、由哉が止まったように見えたけど、次の瞬間には私の涙を指で拭ってくれていた。 『メリークリスマス。』 今年も、温かくて優しいキスが、私の唇に舞い降りた。
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