第一章 出会い

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 通りにはそれほどの人はない。    向かう方向に、見るからに荒れた寺がある。   「丁度いいから、一手御指南いただけないか?」    そでを引いていた腕を逆につかみ、枯れ草の始末をする者さえいない風情の境内へといざなった。   「何を」   「だから、一手御指南を願いたいと」 「放してください」    珪薊児が、秦盟を突き飛ばすようにして身を引いた。    秦盟は、乗ったとみて、相手に拳を突きだした。    さらりとかわされる。    型の通りに、数度突き出す。    ことごとくかわされる。    次は、変化を加え、足ばらいを入れ、さらに速度をあげて拳をたたきこんだ。    ひとつも、わずかにかすることさえない。   「さすが!」    息をはずませながら、ひとまず引き、落ちていた枯れ枝を蹴って宙にあげ、手に取った。    さっと構えてから、力をこめて打ちこむ。    今度もかすりもしない。    二度、三度と振っても、よけられるばかりであった。    すっかり上気して、 「来ないのか?」    相手は、くすっと笑い、すっと姿を消した。    いや、消えたように見えただけだ。  それほど、すばやかった。
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