第一章 出会い

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◇  それ以来、秦盟は、ときどき、珪薊児の家を訪ねるようになった。  荒れ寺で、拳を見せあったりもした。 「貴兄は、力が入りすぎています。  型を覚えるのは早くても、流れの本質がわかっていなければ」  そして、ごく自然に、それこそ草が風にそよぐように、緩急自在の、流れるような動きを見せる。  秦盟は、しばしば、時を忘れてそれに見とれた。  ある、風の強い日のことだ。 「風の日は、特に動きがいいような気がするんだが……」 「風の叔母さんが、こう動けと教えてくださるのですよ」 「比喩か?」  相手は、くすりと笑った。 「今の動きはすごいな。手を右へ流すと同時にひねりが入っていたな、足は、どう動かしたんだ?  こんなものかな」 「いえ、もっとしっかりと重心を動かして。角度も違っています」  言葉ばかりで、手足の位置を、手を添えて教えることはない。  下戸らしく、酒にも付き合わない。秦盟のいる太学の宿坊を訪ねてくることもない。  そんなごく淡い付き合いが、心地よかった。
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