第一章 出会い

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   太学の宿坊は官費でまかなわれている。  二人部屋であるとか、いくつかの窮屈な点をのぞけば、さほどの財産を持たない学生にとっては、ありがたいものであった。    さらに成績優秀であれば、褒品の名目で、各地の書房からの文具の寄付もある。  本だけは自ら手に入れなければならなかったが、それも、不用になったものを譲ってくれる先輩がいたりする。    太学(たいがく)は、朔望(ついたち、じゅうごにち)が休みで、その他、宮廷の大きな行事があるときは休みになる。他にも、あれこれと休みがある。  講義は生刻(ごぜん)だけで、午後は、多くの者が私塾に通う。学費を稼ぐために働く者もある。    さまざまな情報も集まりやすく、学寮住まいの太学生の暮らしは、成績での厳しいふるい落としさえなければ、気楽なものであった。
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