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秦盟は、すでに両親を失っている。
両親は、赫の生まれであった。否、もと、赫だ。
両親の出身地であった拍慶は、今は杏の内である。
先の皇王の御世に、赫は箭河の南に追われた。
そこまでの土地に住んでいたみなは、杏の民となった。
箭河は別名を赤水という。
川の水が赤いからだ。
あたりに住む人々は、箭河の水が赤いのは、先代の皇王に南に追われる時の激しい戦で流された血の色にそまったからなのだと、まことしやかにいう。
裏には、消えない悲しみや怒りや恨みが深く横たわっている。
先代の杏の版図拡大は、かなり性急なものであった。
ために、各地で反乱があいついだ。
そして新しい皇王が立って数年。
若い皇王は、左右のいうがままに、税を重くし、北方の長城を強化、前代に引き続き、強兵策を取った。
反乱を武力で押さえ込み、権力を集中し、優秀な者を選んで官吏にすえる登段試験も引き継いだ。
だが、前代ほどの力はなく、国を富ませるのには失敗した。
民に渡るはずだった資金は途中でどこかに消え、富むのは富裕層ばかり。
だから秦盟は、志を立てた。
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