第一章 出会い

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◇  試験まであと十日あまりとなったある日、珪薊児の家を訪ねると、母親が留守だったらしく、妙に背の高い娘が出てきた。  秦盟よりも高かったから、相当なものだ。  しげしげと見つめるなど礼儀に反するので、あわてて顔をそむけた。 「薊児はいるだろうか?」 「お待ちください」  声までも似ているように思えた。  しばらくして、いつもの灰色の服を着た薊児が出てきた。 「さっきのは、妹ごか? それとも姉上? 貴兄に似て背が高かったな。あれでは母上が苦労するだろうな」  何の気もなく言ったのが、気にしていた事であったらしい。  いきなり、頬を平手でたたかれた。 「侮辱する気ですか」 「他意はないんだ、許してくれ!」  平謝りに謝ると、相手は、何か含んだように笑った。 「貴兄、よく人から、にぶいといわれるのではありませんか?」 「何を言いだす。学業は常に上位だ。やすやすと首座を譲ったことはないぞ」  相手は、さもおかしいというように、声をあげて笑った。 「ここまで笑わせてくれたお礼です。何かひとつ、いうことを聞きましょう」 「ならば今度、他の武芸を見せてくれないか? 拳だけではないのだろう?」 「わかりました。いずれ、機会を見て」
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