第一章 出会い

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 (きょう)の皇王の居城のある皇都・杏京(きょうけい)。    天下太原のほぼ中央、龍河と鹿河という二つの大河にはさまれた、広大な土地に築かれた城郭を持つ都市である。  皇王の城は、実に、その広大な街の北側八分の一を占める。   「それでも杏京は、まだましだよ」  茶屋の店先に腰かけた旅装束の商人が、荷物を下ろし、隣にいる若者と話をしていた。隣には、背の高い笠をかぶった人が座っている。 「杏京には、まだ食糧もあるし、賊も少ない。  (げん)の近くの郷村では、長城の労役につかされて年寄りと子供しかいない街で、略奪におびえながら、暮らしているところがいくらもある」   「北はそんなにか」  答えた若者は、学生のつける頭巾をかぶり、細帯に学章をつけた太学生の身なりをしていたが、文弱というわけではなく、よく日焼けしていて、目つきも厳しい。   「北ばかりではない。南の(かく)の近くにも西の()の近くにも、流民があふれかえっている。各地で閥賊が略奪をくりかえしている」 「各地に官軍が派遣されているというが、やはり?」 「同じだね。官軍のほうが、権力をかさに、よりひどいことをするからな……」   「官吏をめざしている太学生には耳に痛いだろうが、今上は民の事を知らず、官僚たちのいうがままだ。そして、先ごろ迎えた美しい妃に溺れて贅沢三昧とか。  官僚たちも将軍たちも、身分をかさに、奪う集める懐にしまうのやり放題、肥え太るのはそれにつながる金持ちばかり」    そういって、商人は若者を見た。  筋肉質の、均整の取れた体つきは、文官ではなく、武官をめざしたほうが早そうに思えるほどだ。   「そのなりじゃあ、太学生といっても、及第できるほどの本の虫ではなさそうだな。荷運びでも畑仕事でも手伝えるなら何でも手伝って、学費を稼いで、何とかぎりぎりでもってところだろう。そんな苦学では、万一にだって、上位ってことはなかろう。  残念だな。あんたが及第していいご身分になるってんなら、先に渡りをつけておくところだがね」   「すまないな、ご期待に添えなくて」  若者は、苦笑した。  茶を飲み終えた商人が立ち上がり、荷を背負う。 「ではな」  
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