第一章 出会い

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「しかし……高いな」  秦盟が珪薊児を見あげる。身なりに変わった様子はない。そのあたりの店の使用人といったところだ。  色はやや白い。おそらく、外ではなく、店内のつとめなのだろう。   「丈六寸(約180センチ)。呼びたければ丈余(のっぽ)とでも何とでも」 「にしては肉がない。あれだけの動きをして……まるで、仙だな」 「ご冗談も休み休みになさってください。先生方に失礼です」  珪薊児は大きく首を横に振った。    杏京の街は高い障壁に囲まれていて、各所に門がある。南に四、東西に三ずつ、あわせて十一。  その中にある皇城も高い障壁に囲まれていて、街から出入りできる門の数は三。通常は左門と右門だけが使われる。中央の王門は皇王の出入りの時にしか開けられることはない。    梅はほころび始めているが、風は冷たく、本格的な春までにはまだ間がある。   「休みの時には声をかけてくれ。その身のこなし、一手二手、ご指導願えれば助かる」 「ご縁があればまた」    秦盟は、もどってきた紀民とともに太学の宿坊にもどった。  
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