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「しかし……高いな」
秦盟が珪薊児を見あげる。身なりに変わった様子はない。そのあたりの店の使用人といったところだ。
色はやや白い。おそらく、外ではなく、店内のつとめなのだろう。
「丈六寸(約180センチ)。呼びたければ丈余とでも何とでも」
「にしては肉がない。あれだけの動きをして……まるで、仙だな」
「ご冗談も休み休みになさってください。先生方に失礼です」
珪薊児は大きく首を横に振った。
杏京の街は高い障壁に囲まれていて、各所に門がある。南に四、東西に三ずつ、あわせて十一。
その中にある皇城も高い障壁に囲まれていて、街から出入りできる門の数は三。通常は左門と右門だけが使われる。中央の王門は皇王の出入りの時にしか開けられることはない。
梅はほころび始めているが、風は冷たく、本格的な春までにはまだ間がある。
「休みの時には声をかけてくれ。その身のこなし、一手二手、ご指導願えれば助かる」
「ご縁があればまた」
秦盟は、もどってきた紀民とともに太学の宿坊にもどった。
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