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セシルが、村のはずれに足を踏み入れた瞬間から感じられていた例えようのない不安は村の中心部へ進むにつれて確信へと変わっていった。
――人がいない。
村を駆け回る子どもたち。店先で物を売る商人。道を行き交う人たち……
真昼間だというのにこの村は、まるで廃村のようにしーんと静まりかえっていた。
ガタッ!
突如、セシルの背後で物音がして彼は勢いよく振り返った。
人を期待していたセシルの目に映ったものは、ゴミ箱を漁る野良犬。ひどく痩せこけている。
セウンデ村は決して裕福な村ではないが、人と動物が仲良く暮らす村である。
野良犬や野良猫に餌を与える者はたくさんいた。
今、目の前にいる犬はまるで骨と皮で、必死に残飯を漁っている。
ここは、本当に俺の生まれた村だろうか――。
そう考えてしまうほど、今のセウンデ村は異質であった。
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