セウンデ村

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 ギィ、と軋んだ音を立てて、居間の奥の部屋の扉がゆっくりと開いていく。  居間の奥は、セシルの弟妹たちの部屋である。 「……ミシェル?」  恐る恐る、セシルは扉の向こうに声をかけた。  次の瞬間。 「にいちゃー!」  かん高い声を響かせて、小さな影がセシルに向かって突進してきた。 「アイリーン!部屋から出ちゃ駄目だってば……っ」 それを追いかけるようにもう1人、子供部屋から出てくるのを視界の隅で確認しながらも、セシルはまず自分に向かってくる影を受け止めた。 「……アイリーン!」  セシルの膝に抱きついてきた小さな影は、彼の一番下の妹のアイリーンであった。  今度こそ心からの安堵の息を漏らし、セシルはその場にしゃがみ込んでアイリーンを見つめた。 「元気だったか、アイリーン」  アイリーンと呼ばれた女の子は、りんごのように赤いほっぺたをさらに赤くして大きく頷いた。 「うん!げんきー」  その仕草を見てセシルも顔がほころび、アイリーンの頭をくしゃくしゃと撫でつけた。
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