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「セシル兄さん!」
「兄ちゃーん!」
ミシェルと抱き合っていると、奥の部屋から他の弟や妹達が次々に出てきて、彼の側に寄り添った。
セシルはその1人1人の頭を撫でていく。
「セシルかい……?」
そして最後に聞こえてきたのは、しわがれた、弱々しい声だった。
セシルは顔を上げ、声の主を見た。
「お袋……」
彼は母親の顔を一目見て、事態の深刻さを改めて実感した。
もともと細身の人ではあったが、その頬は痩せこけ、目は窪んでいる。
半年前に見た母はもっと若々しく生き生きしていた。
今の母親は憔悴しきっていた。
「……嫌な噂を聞いたんだ。帰ってきて正解だった」
セシルの言葉に、母親は堅く目を閉じ頷いた。
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