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「……親父は?」
セシルの帰郷に、母と弟妹は出てきたというのに、この家の主の姿が見当たらない。
セシルは嫌な予感で心臓が脈打つのを感じた。
「今、ちょうど村の男達が集まって話し合いをしているところなんだよ」
しかし母から返ってきた言葉は予想を裏切るもので、それはセシルを安堵させた。
「そうか。……いつからなんだ?」
気持ちを切り替えてセシルは訊ねた。
母親は、居間に置かれている食事用の大きな木のテーブルに手を突いて、息を吐いた。
「……ひと月くらい前からだったかね。ある日突然、やつはこの村に現れたんだ。陽が落ちるとすぐ、裏の山から下りてきて、毎日一人ずつ……」
そこで母親はいったん言葉を区切った。
自分の発する言葉に怯えているかのようだった。
「村人を毎日一人ずつ、喰っていくんだよ」
血の気の失せた顔でやっとそれだけ言うと、母親は黙り込んだ。
セシルも眉間にシワを寄せ、黙っていた。
まさか自分の村にモンスターが棲みつくとは……。
セシルは苦虫をかみつぶしたような表情になった。
しかしそこで、彼はある違和感に気付いた。
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