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「……」
ずっと鳴り続けていた葉音が止んだ。
不気味な静寂がサラの身を包む。サラは息を止め、体を固くした。
「……」
警戒するように周りを見渡しながら、ゆっくりと一歩、足を踏み出したその時だった。
突然、サラの体が真横へ飛んだ。
「うっ」
セシルの家の庭に立つ木の幹に背を打ち、サラは呻き声をあげた。
「キャハハ!」
痛みに耐えるサラの頭上から、笑い声が降ってきた。
ハッとして真上を見上げる。
無数の木の枝と生い茂る葉。その隙間から漏れる月の光以外、目に映るものはない。
重なる木の枝の死角を探ろうと立ち上がったサラの目の前に、突如黒い影が現れた。
瞬時にサラは一歩退いて、影との間合いをはかる。
「誰っ!?」
サラは張り詰めた声をあげた。
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