11.撃沈女は絡まれる

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痛い、痛い、痛い。 心は、漫画みたいな量の涙が溢れてもおかしくないくらい痛むのに、一滴も涙が出てくれない。 いや、涙が出ないから、余計に心がズーンと鈍い痛みに襲われているのかもしれない。 涙になって外に吐き出される筈だったモノが、内に溜まり込んで――この鈍痛は、パンパンに膨らんだ心の器の軋みなんだと思う。 だって、どんなに辛くても、大泣きした後は結構気分は軽くなるから。 それが出来ないから、こんなに胸の内側がズキズキ痛むんだ。 気を紛らわせるために見た腕時計は、9時半少し過ぎ。 幾分か交通量が減ったその道。 見上げた街灯には、無数の虫達が集っていた。 光というオアシスを求めて集まる虫達は、なんて慎ましやかなんだろう。 見返りも求めず、ただ、そこにある光に集う。 私だって、最初は見てるだけで充分だった。 だけど、その優しさや人柄、気遣いに触れてるうちに、もっと声を聞きたい、もっと笑顔が見たい。 そんな風に欲が出てきて――結果、告白なんて相手からの見返りを求めたせいでこの状況。 涙が出ないなら、せめて溜め息で誤魔化せないだろうか。 私は、大きく深く息を吐き出した。 …………。 気休めくらいにしかならなかった。 「オネーサン、大丈夫?」 上げていた視線を駅の出入り口へと向けた時、だらんと下げた左腕を引っ張られた。
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