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痛い、痛い、痛い。
心は、漫画みたいな量の涙が溢れてもおかしくないくらい痛むのに、一滴も涙が出てくれない。
いや、涙が出ないから、余計に心がズーンと鈍い痛みに襲われているのかもしれない。
涙になって外に吐き出される筈だったモノが、内に溜まり込んで――この鈍痛は、パンパンに膨らんだ心の器の軋みなんだと思う。
だって、どんなに辛くても、大泣きした後は結構気分は軽くなるから。
それが出来ないから、こんなに胸の内側がズキズキ痛むんだ。
気を紛らわせるために見た腕時計は、9時半少し過ぎ。
幾分か交通量が減ったその道。
見上げた街灯には、無数の虫達が集っていた。
光というオアシスを求めて集まる虫達は、なんて慎ましやかなんだろう。
見返りも求めず、ただ、そこにある光に集う。
私だって、最初は見てるだけで充分だった。
だけど、その優しさや人柄、気遣いに触れてるうちに、もっと声を聞きたい、もっと笑顔が見たい。
そんな風に欲が出てきて――結果、告白なんて相手からの見返りを求めたせいでこの状況。
涙が出ないなら、せめて溜め息で誤魔化せないだろうか。
私は、大きく深く息を吐き出した。
…………。
気休めくらいにしかならなかった。
「オネーサン、大丈夫?」
上げていた視線を駅の出入り口へと向けた時、だらんと下げた左腕を引っ張られた。
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