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◆◇◆
「もー、聞いて下さいよ……」
いつ来てもお客の居ないこの店の経営状態が気にはなるけど、身の上話をするにはソレがとてもありがたい。
私は店に入るなり、入口に一番近い席に陣取った。
「おいおい、一体どうしたんだよ」
カウンターの向こう側で氷を砕いていた向島さんは、アイスピックを置くと、タオルで手を拭きつつ此方に身体を向けた。
自分でも何でこの人に愚痴ってるのか分からなかった。
けれど、何となくこの人なら馬鹿にしたり、面白がったりせずに、先週末からの災難をちゃんと聞いてくれそうな気がしたから。
告白がグダグダになってしまった事。
そして、玉砕した事。
更に、今日一日の篠原さんの態度。
普段そんなに愚痴を溢す方でもないけど、話し出すと止まらなかった。
感情的になるせいで若干汚くなる言葉も、今の私には訂正するなんて事まで気が回らない。
出されたグラスにも手を付けず、ただツラツラと八割型文句な話を溢しまくる。
そして、私は今の自分の心情――――篠原さんに対する憤りを洗いざらい吐き出した。
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