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「何であんなに普通でいられるのか、私には理解できないですよホントに」
一頻り話をした私は、そこで大きく息を吐き出した。
喋り続けていたせいか、急に訴えかける喉の渇きに、漸くそのグラスに手を伸ばす。
手の中に収まるサイズの丸っこいフォルムのそれ。
室温に近いせいなのか、クリアなままのグラスには、カラメル色に染まる、水面に浮かぶ砕いた氷と底に沈む丸い果実。
両手で包むようにして持ち上げれば、僅かな振動で果実がこ、ろ、と中で踊った。
同時に、果実の周りのカラメルが陽炎のようにゆらゆらと揺らめく。
まるで真夏の太陽が纏う、目眩を起こすようなあの独特の煌めきを掬いとったみたいだ。
鼻先に感じる爽やかでフルーティな香に、ゴクリと喉が鳴る。
一口含めば、甘味と酸味が絶妙な何だかとても懐かしい夏の味がした。
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