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「まあなあ。あんたの言い分も尤もだが……振った方は案外そんなもんだと思うぞ?」
カウンターに頬杖を付きながら、グラスをクルクル遊んでいれば、不意に響くバリトンボイス。
顔を上げて声の主を見れば、向島さんも同じ形のグラスを傾けると、何か考えるように眉を寄せていた。
「今あんたに言うのも酷な話かもしれないが……気にするなって言われりゃ、振った方はそのようにするさ。少なからず振った負い目があるからな」
「負い目……ですか?」
「そう。負い目。よっぽど嫌ってる相手からなら別だが、そうでないなら"気持ちに応えられなくて悪いな"って思うもんだろ?」
「それは……」
「そんな罪悪感からの負い目があるなら、告白には応えられない代わりに、できる限り相手の意向には沿おうって考えるのが人情だと思うがね。俺は」
向島さんは空になったグラスを脇に置くと、シンクの縁に身体を預けつつ腕を組んだ。
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