13.苛つく女はbarに行く

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◆◇◆ 「せんぱーい」 職場の通用門を入ろうとした所で足を止めた私は、声のした方――――駅とは反対方向から、小走りでやってくる新谷ちゃんへ向き直った。 「おはようございます。先輩がギリギリって珍しいですよねぇ?」 連れだって歩き出せば、彼女はクリンとした目をパチパチと瞬きさせつつ首を傾げる。 つられて、落ち着いた黄色のラリエットもスルンと揺れた。 流石、いつもオシャレに気合いが入っている彼女だと思う。 九月最初の出勤日から、既に秋の雰囲気を取り入れている辺り、余念が無い。 「んー。ちょっと寝坊しちゃって。今日、こんな天気でしょ?暗くて時間を勘違いしたんだよね」 私はチラッと曇り空を見上げては、再び隣へと視線を移す。 本当は、何だかんだ言って気が重いのは事実で、のらりくらりと身支度をしていたら、ついつい家を出るのが遅くなったんだけど。 けれど、本当の理由なんか言ったら、金曜日の話もする羽目になるだろうから、私は「たまにやらかすんだよね」と笑って誤魔化した。
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