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何か、モヤっとする。
篠原さんの出ていった扉を視界に捉えたまま、私は小さく息を吐き出す。
気にしなさ過ぎに思えるのは私だけ?
確かに「気にしないでください」って言ったのは私だし、
あれから三日も経ってるから、篠原さんの中では、ほとぼりの冷めた話かもしれない。
だけど、さっきの篠原さん……私の気持ちを知る前の篠原さんと全然変わってない。
いつもどおりの声かけ。
いつもどおりの眩しい笑顔。
いつもどおりの他愛の無い雑談。
…………。
もしかして、実は週末の記憶は全て夢の中の話で、実際はまだ告白なんかしてないのかも?
「柏木くん、領収書だよ、領収書」
私の淡い期待に水をさす、焦ったような甲高い声。
そんな都合の良い夢オチな話なんか、普通無いよね。
大きく肩を落とした私は、手帳に挟んだ領収書を取り出し、係長へと差し出した。
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