02.気付いた男も手を握る

11/27
前へ
/38ページ
次へ
「って、後で分かる事だけど……」 頬に触れる、ふに、とした感触に顔を上げれば、途端にそれは私の唇を塞いだ。 けれど、何となくその質感に違和感を覚えた私は、グッとその胸を押し返し彼の顔を見詰める。 驚いたように見つめ返してくるその瞳が、一呼吸置いてほんの少し翳りを含んで見えた。 「ごめん……嫌だった?」 「あ、いえ、そういうわけじゃなくて……ここ、荒れてるなって」 伸ばした指先で触れた彼の唇は、やっぱり少しカサカサしていて、その端に血が滲んでいた。 「ホントは昨日、何時に寝たんですか?」 睡眠不足の影響がよく出るその場所。 朝の眠そうな様子も頭を過り、全自動で眉間に力が入る。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 暫くのアイコンタクト。 そして、おもむろに彼が大きく息を吐き出した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加