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「って、後で分かる事だけど……」
頬に触れる、ふに、とした感触に顔を上げれば、途端にそれは私の唇を塞いだ。
けれど、何となくその質感に違和感を覚えた私は、グッとその胸を押し返し彼の顔を見詰める。
驚いたように見つめ返してくるその瞳が、一呼吸置いてほんの少し翳りを含んで見えた。
「ごめん……嫌だった?」
「あ、いえ、そういうわけじゃなくて……ここ、荒れてるなって」
伸ばした指先で触れた彼の唇は、やっぱり少しカサカサしていて、その端に血が滲んでいた。
「ホントは昨日、何時に寝たんですか?」
睡眠不足の影響がよく出るその場所。
朝の眠そうな様子も頭を過り、全自動で眉間に力が入る。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
暫くのアイコンタクト。
そして、おもむろに彼が大きく息を吐き出した。
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