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「分かってはいるんだけど……ね」
漸く目も慣れてきたのか、ぼんやりと開ける視界。
前髪の向こうに揺れる、切なげに歪んで見えるその二つの瞳。
私は思わず息を飲み、その拍子に両手から僅かに力が抜けた。
途端、その両手は意図も簡単に捕えられ、シーツの海に沈む。
スプリングの軋む音と共に、グッと掛けられた体重。
そして、重なる唇。
『明日も早い』
頭の中で大きく存在を誇示しているその言葉が、私にそれ以上の行為を塞き止めさせる。
それなのに、探るように彷徨う唇がクッと私のそれを挟み、割り込んでくるぬるりとした感触。
始めこそ、色気も何もない唸るような抗議の声を上げていたものの、絡まる舌先が私の思考を押し流した。
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