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口の中を、試すみたいになぞる熱くて柔らかいそれに、ずくん、ず……くん、と込み上げる何か。
痺れるような疼きに、漏れてくるため息。
「は、ぁ」なんて、自分の声とは思えない色を含んで響くそれに、身体も心も火照るばかり。
けれど、崩れかかった思考の片隅で、やっぱり頑として居座るその言葉。
だって、後先考えずに夜更かしして、挙げ句「寝坊しました」なんていい大人のする事じゃないというか……
「……どうしても、ダメ?」
「だって、倉橋さん前に……"遅刻するからって止めてくれなきゃ"みたいなこと……」
「あー、確かにそれは言ったけど」
顔を背けて逃げる私と、覗き込むように視線を絡めてくる彼の瞳。
ゆっくりと繰り返される瞬きとは対照的に、私の心臓は早鐘を打つように騒ぎ立てた。
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