02.気付いた男も手を握る

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口の中を、試すみたいになぞる熱くて柔らかいそれに、ずくん、ず……くん、と込み上げる何か。 痺れるような疼きに、漏れてくるため息。 「は、ぁ」なんて、自分の声とは思えない色を含んで響くそれに、身体も心も火照るばかり。 けれど、崩れかかった思考の片隅で、やっぱり頑として居座るその言葉。 だって、後先考えずに夜更かしして、挙げ句「寝坊しました」なんていい大人のする事じゃないというか…… 「……どうしても、ダメ?」 「だって、倉橋さん前に……"遅刻するからって止めてくれなきゃ"みたいなこと……」 「あー、確かにそれは言ったけど」 顔を背けて逃げる私と、覗き込むように視線を絡めてくる彼の瞳。 ゆっくりと繰り返される瞬きとは対照的に、私の心臓は早鐘を打つように騒ぎ立てた。
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