02.気付いた男も手を握る

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◆◇◆ ふと目が覚めれば、まだ薄暗い部屋の反対側に本棚の白が、ぼんやりと浮かんで見えた。 ゴソゴソと枕元を探り、指先に当たったプラスチックの感触。 ――カチッ。 開いた携帯が、ぼうっと青い光を放つ。 相変わらず月明かりに戯れるイルカと、右上の小さなデジタル表示。 私はホッと息を吐き出し、肩の力を抜いた。 そして、手にしていた携帯を閉じる。 なんとなくチラリと隣へ視線を投げれば、掛け布団の端から覗く黒い髪。 てっぺんだけ出ている頭と、そこから稜線を描くようにこんもりと膨らんだ布団が、ゆっくりと上下していた。 ベッドから這い出した私は、手の中の携帯をポイッと投げる。 すると、それはシーツの上で小さく跳ねた。
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