02.気付いた男も手を握る

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――らっしゃい!! 暖簾をくぐると芳ばしい薫りと共に、威勢の良い声が出迎えてくれた。 「いらっしゃいませ~。二名様ですね?こちらへどうぞ」 にこやかな笑顔で案内してくれる係の人は、どうやら妊婦さん? 腰まわりを覆う前掛けが、ポッコリ膨らんでいるように見える。 和と漁師なんて言葉が思い浮かぶ店内は、提灯みたいな照明と大漁旗の額、振り子がカチコチ揺れるレトロな柱時計などが目を惹く。 案内されるまま、混み合うテーブル席の脇を通り抜ければ、カウンターの向こう側に立つ捻り鉢巻きをしたハゲ頭が、ペコリと会釈をしてきた。 「お席は二階になりますのでー」 カウンター横のスペースで靴を脱ぎ、二階へと伸びる狭い階段を上る。 急勾配のそこ、一段上がる度に響く、ギィッギィッと板の軋む音。 足元に注意しながら上る私は、さっきの店員さんが気になってチラと下を見る。 あのお腹で、この階段は危ない気がする。 けれど、私達の靴を下駄箱に入れた彼女は、特に戸惑う事もなく階段を上り始めた。 …………。 倉橋さんに続いて階段を上りきれば、板張りの廊下と、その脇に襖が数枚並んでいる。 私達は、後から来た彼女に、その中の一つへ案内された。
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