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倉橋さん、ごめんなさい。
益々、所長や高崎係長にダブってきてしまってます。
肩を落とす仕草といい、渋そうな顔といい、放つ雰囲気が彼らと同系統の色合いを含んで、何だか彼の背後がワントーン暗く見える。
古川所長、高崎係長、そして、倉橋係長。
やっぱり、管理職になるとみんなそんな風になるのだろうか?
――失礼しまーす。
沈んだ空気をかき混ぜる言葉は、快活な男性の声。
襖がススッと開けば、醤油の焦げた良い香りが部屋の中に流れ込んだ。
「鰈の煮付け膳、お待たせしました~」
食器を満載したおぼんを二つ手にしているのは、さっき下で見た捻り鉢巻きを若くした感じのお兄さん。
髪はあるけど顔のパーツはほぼ一緒だから、多分親子。
そんな作務衣姿のお兄さんは机の上に料理を配置し、「失礼しました~」と無駄のない動きで直ぐに戻っていった。
「まあ、とりあえず食べようか」
「そうですね」
どんよりしていた空気も、美味しそうな料理を前にすれば和らぐ。
私達は、暫く他愛ない会話をしながら、食事を楽しんだ。
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