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◆◇◆
バス停に着いたのは七時半過ぎ。
時刻表の上に灯るデジタルの表示を見れば、あと十分程でバスが来るみたい。
「結構良いお店でしたね。煮付けの鰈も美味しかったですし」
「だね。昼は試食の肉料理で済ませちゃったから、丁度魚が食べたかったんだよね」
――ヴゥゥ、ヴゥゥゥ、ヴゥゥゥ……。
「あ、ごめん。例の同期から電話だ」
会話の途中に混じる低い振動音に、倉橋さんは「はぁ」なんて溜め息を吐き出すと、ポケットから出した黒い携帯を耳に押し当てた。
「あ、堀内(ほりうち)?何、仕事の話?愚痴なら後に……」
腰に手を当て、少し上を見上げるような仕草で電話に集中する倉橋さん。
暗がりでその表情はあまり分からないけど、その口調は始めこそ軽かったものの、直ぐに真剣さの伝わるそれに変わった。
「うん。だからさ、それは俺の資料見たらわかるでしょ……うん、うん……」
何を話しているのか、詳しくは私の知るところではないけど、何やらソーセージの肉の配合がどうとかいう話らしい。
「ま、そういうわけだから……はーい」
「お疲れ様です」
電話をしまう倉橋さんに声を掛ければ、一瞬視線が絡む。
けれど、直ぐにその顔はスッとそっぽを向いてしまった。
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