04.彷徨く女は愚痴られる

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「隣、座っても?」 聞き覚えのある声に顔を上げれば、予想どおりのその人。 猫っぽい、つり上がり気味の目尻が特徴の山上綾が、涼しげな笑みで立っていた。 うわあ、なんて心の声が漏れるのは、やっぱりなんだかそのキツそうな目線にビビってしまうから。 人を見掛けで判断するのは良くないとは思うけど、 この強気な眼差しに、『顧問の孫』なんてステータスが加わったら、水戸の御老公と一緒だ。 確かにハムフェスの一件で、噂と違うような気はするけど、それでもあまり波風を立てたくない相手なのが本音。 だから私は、「どうぞ」と一言返し席を詰めた。 「それにしても、この時間は騒がしいわね」 重そうな紙袋を座席とふくらはぎの間に収め、ブリーフケースと鞄を膝の上に置いた彼女。 小さく肩が上下し、息を吐き出すのが見えた。
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