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「隣、座っても?」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、予想どおりのその人。
猫っぽい、つり上がり気味の目尻が特徴の山上綾が、涼しげな笑みで立っていた。
うわあ、なんて心の声が漏れるのは、やっぱりなんだかそのキツそうな目線にビビってしまうから。
人を見掛けで判断するのは良くないとは思うけど、
この強気な眼差しに、『顧問の孫』なんてステータスが加わったら、水戸の御老公と一緒だ。
確かにハムフェスの一件で、噂と違うような気はするけど、それでもあまり波風を立てたくない相手なのが本音。
だから私は、「どうぞ」と一言返し席を詰めた。
「それにしても、この時間は騒がしいわね」
重そうな紙袋を座席とふくらはぎの間に収め、ブリーフケースと鞄を膝の上に置いた彼女。
小さく肩が上下し、息を吐き出すのが見えた。
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