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今の話、不自然に思われた?
いや、寧ろ不自然なのは山上綾の行動であって……。
見詰める先の、カウンターに出来たグラスの跡は幾分か乾いて鈍く光る。
…………。
「あ、あの……」
途切れた会話に耐えきれず、多少ビクつきながら隣へと視線を投げれば、
「ん?あ、ああ……ごめんね。何でもない、ちょっと飲み過ぎたかも」
なんて、顔をしかめて額に手を当てる彼の仕草。
何だろう。
彼の様子も、物凄く不自然に見えるのは気のせい?
「大丈夫ですか?」
「んー、実は昨日ちょっと寝たのが遅かったんだよね。だから、アルコールの回りが早いのかも」
彼は眼鏡を外し、親指と人差し指とで目頭をちょいちょいと摘まんでは、またそれを元に戻す。
「悪いんだけど、そろそろお開きでも良い?もう8時も過ぎたし……」
左腕に視線を落とす彼は、「明日も早出なんだよね」と、肩を竦めて笑った。
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