08.甘える女は名前を呼ぶ #2

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今の話、不自然に思われた? いや、寧ろ不自然なのは山上綾の行動であって……。 見詰める先の、カウンターに出来たグラスの跡は幾分か乾いて鈍く光る。 …………。 「あ、あの……」 途切れた会話に耐えきれず、多少ビクつきながら隣へと視線を投げれば、 「ん?あ、ああ……ごめんね。何でもない、ちょっと飲み過ぎたかも」 なんて、顔をしかめて額に手を当てる彼の仕草。 何だろう。 彼の様子も、物凄く不自然に見えるのは気のせい? 「大丈夫ですか?」 「んー、実は昨日ちょっと寝たのが遅かったんだよね。だから、アルコールの回りが早いのかも」 彼は眼鏡を外し、親指と人差し指とで目頭をちょいちょいと摘まんでは、またそれを元に戻す。 「悪いんだけど、そろそろお開きでも良い?もう8時も過ぎたし……」 左腕に視線を落とす彼は、「明日も早出なんだよね」と、肩を竦めて笑った。
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