08.甘える女は名前を呼ぶ #2

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◆◇◆ 駅に向かって伸びる、少し人通りも落ち着いた道。 初冬の冷たい夜風が、暖房に慣れた頬に滲みる。 視界に映る連なった街灯の青白い光と、半歩前で風に遊ぶ黒い髪。 「明日も早出って、また何処かに出掛けるんですか?」 「…………」 「倉橋さん?」 「え、あ……何?」 「いや、明日の早出も出張なんですか?」 「あー、うん。いや、明日はチーフミーティングだよ」 店を出た後も、何だか様子がおかしい。 いつもなら時折飛んでくる筈の視線が、さっきからずっと前を向いたまま。 耐えきれず投げ掛けた質問も何処かうわの空で返され、自然と漏れた溜め息。 やっぱり話なんかしなければ良かった。 ――話くらい聞くけど? これじゃ、ホントに聞くだけで、しかも何だか気まずいというか、 ――溜め込むと高崎さんみたいに……。 かえってモヤモヤの原因が増えただけなんですけど! 首をもたげたイライラの芽。 私は、 彼の手を握る力を緩めて――――
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