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一分なのか、十分なのか。
もしかしたら、もっと長い時間かもしれないし、意外と短い時間だったかもしれない。
目の前の彼女は、相変わらずの綺麗な横顔のまま、ぼんやりと外を見ている。
時折揺れる睫毛が、辛うじて生きてる事を表しているような、そんな、不可思議な存在。
そして――――
「先輩……LGBTとか、セクシャルマイノリティって言葉を知ってますか?」
漸く彼女の口が開いた。
ただ、目線は此方を向いていない。
遠くを見るような雰囲気は未だ変わらず、抑揚の無い声が響く。
「え……」
「私、それなんです」
「…………」
「私が好きになるのは、いつも女の人なんです」
其処でクスッと笑った彼女は、一瞬だけ此方を見たけど、再び視線は逸れる。
「気持ち悪いですよね、私」
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