03.オフの男は名前を呼ぶ #2

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頭に血が上るのは一体いつぶりだろうか。 この前スーツの「就職浪人」発言の時もイラッとしたけど、今のこれはその比じゃないと思う。 スウッと頭が軽くなるような、上から引っ張られるよな、そんな感覚に ――プツン。 何か大事なモノが切れた。 「もっと真面目って……私、充分真面目ですよ!」 そうだよ。 私だって本心は、今から出社なんて嫌に決まってる。 だけど、明日のプレゼンに間に合わないのは、どう考えたって避けなくてはいけない。 仕事はきちんと期日までに仕上げる。 体調崩して熱を出している時でさえ、家に持ち帰ってまでそれをしていたのは他ならぬ和也さんだ。 バーの話は兎も角、今の私の電話の対応は間違ってないよ。 「大体、貴方こそもっと大人だと思ってましたけど、違うんですね!」 ふん!と息を吐き出し、目の前の身体を押し退ける。
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