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「ちょ……ミズホ!」
何度目かの圧力は私の二の腕を捉える。
いつもならドキリとしてしまうグイッと引き寄せられる感覚も、この場においては嫌悪感しかない。
私、和也さんが仕事に熱中してる姿、気後れしたりコンプレックスを感じたりもするけど、実は凄く好きなのに。
「今の和也さん、正直一緒に居たくないです。離してください」
掴まれた腕をグッと此方へ戻しつつ振り払えば、不満が全開の眼差しが視界を掠める。
だけど、もう知らない。
幾らクリスマスだって、
誕生日だって、
私も和也さんも社会人。
――仕方ないです。〆日に生まれた宿命ですからね~。
思い出す快活な声にほんの少しだけ胸が痛むけど、新谷ちゃんのがよっぽど大人だ。
カツカツと響く靴音が妙に大きく反響する。
モザイクの壁を通り過ぎれば、上り電車の到着案内がノイズと共に流れた。
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