102人が本棚に入れています
本棚に追加
廊下に出た瞬間ひんやりした空気に包まれる。
暦の上では春だと言うけど、やっぱり空調が切れてる場所は少し肌寒い。
同じく節電モードの一つおきに灯る蛍光灯の明かりの下、私は手にした電話を耳に押し当てる。
小さく息が漏れ、見つめた先には非常口の緑色の光。
「もしもし?お疲れ様です」
『あ…………』
電話口から聞こえたのは、ノイズ混じりの言葉ではなく息が漏れたような小さな声。
…………。
けれど、それきり声は途切れて、鼓膜を叩くのは風の音なのか呼吸の音なのか、兎に角「ボッ、ボボッ」なんて空気の塊がぶつかる音だけ。
緑色の人間マークが一度だけ明かりを落として、再び灯る。
遠くで窓ガラスがガタガタ震えた。
最初のコメントを投稿しよう!