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「………何処だ、此処?」
目一杯に広がる青空を見上げながら、俺は呟く。
昨日は大好きな三国志の小説を読みながらベッドに入り、そのまま寝落ちした気がする。
「何か頭痛がするし」
背中の感触が妙に固いと思って起き上がると、一瞬目眩のするくらい強い頭痛に襲われた。ようやく頭痛が治まり辺りを見回すと、一面の荒野が広がっていた。
「訳分かんねぇ」
よもや寝ている間に運び出され、何処かに捨てられたのかもしれない。
しかし、そんな拉致じみたことをされる覚えはないし、そんなことをしても、犯人に利点は無い。
家は中流で金がある訳でも無い。それに金目当てなら、こんな場所に捨て置く意味が無い。いや、何処か解らない場所に捨てておけば、見つかる心配も無いのか。
とにかく、それ以外の目的だろうと意味が分からない。
なら、此処は何処なんだ?
「さっぱり分からん」
試しに向こうに見える山まで歩いて行って、頂上から辺りを見回そうかとも思ったが、止めておいた。こういう展開は、目覚めた場所を動くと大抵良くない結果になる。
自分が数ある物語の主人公と同じような境遇にあるからと言って、自分を主人公だとは思わないが、少なくとも状況が好転しないことを進んで行う気も無い。
しかし、このまま此処にいる訳にも行かない。気温はさほど高くもないが、それでも喉は渇くし腹は減る。
動いても状況は好転しないが、止まっていても好転しない。ならば………。
「いやいや、その思考がまずい。どの主人公を見ても、そうやって動いた結果、一回酷い目に遭わないと助けが来ない。俺は勿論、一回だろうと酷い目には遭いたくない」
一見冷静に見えて、意外とそうでも無いような思考をしながら、もう一度空を見る。
「都合が良いな。太陽が中天にあるよ」
太陽の位置で方角と時間を知ろうとした訳だが、大体昼の12時頃と分かっただけだった。
「ん?よく見たら、俺何で制服着てるの?………持ち物は、携帯に財布。後は、何故か分からないけど数学のテスト」
あぁ、そういえば昨日の帰り際に先生が配ってたから、畳んでポケットに入れたのか。
どうでも良いことに納得しながら、うんうんと頷く。
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