†PROLOGUE†

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 まぁ夢なら夢で、楽しめば良いか。 「それにしても、珍しいものを着ているね。何処から来たの?」 「日本」 「日本?それは何処の州にあるの?」 「ここから東に行って、海を越えた所だ。今だと倭なのかな?」 「孫策様。やはりこの者は危険です。海を越えて来るなど不可能です」 「ちょっと黙ってて韓当。ねぇ、私と一緒に来てくれない?貴方の話もっと聞きたいの」  顔近っ! 「わ、分かった。分かったから、ちょっと離れてくれ」  あまりの近さに挙動不審になりながら、何とか孫策を押し返す。 「本当?じゃあ今から………」 「伯符殿。残念だが、今からは無理だ。文台殿の元に早く行かなくては」 「えぇー!折角今から楽しそうな所なのに。凌操、何とかなんないの?」 「諦めることです。この者には近くの邑にでも行ってもらって、後から会いに行くことです」  凌操の言葉に、孫策が心底残念そうに項垂れる。しかし、すぐに笑みを浮かべながら頭を上げる。 「じゃあこの人にも一緒に来てもらおう!」 「孫策様!こんな得体の知れない奴を連れていかれるのですか!?それは流石に看過出来ません」 「伯符殿、韓当の言う通りだ。文台殿まで危険に晒すことになるのですぞ」 「大丈夫よ。私が着いていれば良いんだし。それより貴方の名前まだ聞いてなかった」 「俺は黒川征夜」 「姓が黒、名が川、字が征夜?」 「いや、姓が黒川で名が征夜。字は無し」 「字が無いなんて変わってる。けど良い名前ね」  微笑みながら差し出された手を征夜はそっと握り返す。 「全く、孫策様は。後で孫堅様に叱られても知りませんからね」 「黒川、だったか。私の後ろに乗れ」 「良いのか?俺のような得体の知れない奴を」 「仕方あるまい。伯符殿は頑固だからな。ほら早く乗れ。刻限に遅れて叱責を受けるのは我らなのだぞ」  馬上から差し延べられた手を握り、凌操の後ろに乗る。その頃には孫策も馬上へと戻って手綱を握っていた。 「孫策様、急ぎませんと間に合いそうにありません。少し飛ばして行きましょう」 「だってよ、征夜。振り落とされないようにねー」  一度こちらを振り向いて笑いかけてから、馬を走らせる。  少し遅れてから凌操も馬を走らせる。最初は余裕だったが、段々早くなるにつれ、必死になって凌操の体を掴む。
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