一章 †黄巾の乱†

2/20
前へ
/32ページ
次へ
 ん?なんだ柔らかい。ベッドから落ちずに済んだらしい。  大きく伸びをした後、勢いをつけて体を起こす。  ………何処ここ?  そんな疑問を抱いたとき、部屋の扉が開き、人が入ってくる。 「あ、目覚めた?良かった。馬から落ちたときはどうしようかと思ったよ。どう?頭大丈夫?」 「あぁ、何とか大丈夫……だと思う」 「曖昧な返事ね。本当に大丈夫?なんか気が抜けたような顔してるけど」 「俺、夢見てんじゃないよね?」  ムニ。 「どう?痛い?」 「いはい」  孫策に両頬を引っ張られた間抜け顔のまま答え、一つの確信を得る。  これは夢じゃないらしい。タイムスリップは現実に起きたのだ。  俺、黒川征夜は、三国志の世界に来てしまったのだ!  そんなことより………、 「ほんはふはん、もう良いでふ」 「でも、なんかこれ楽しい♪」 「困りまふ。もうはなひへ」 「もう、しょうがないな。でもこれで夢じゃないって分かったでしょ」  孫策に散々弄ばれた頬を手で押さえながら答える。 「おかげで夢じゃないって確信が持てたよ」 「さて。それじゃあ早速、貴方の話聞かせてもらおうかな?」 「あぁ、何でも聞いてくれ」 「じゃあ、貴方の住んでいた国のことを教えて?日本、だっけ?」  それから俺は、孫策に自分のことを色々話した。日本のこと、自分のこと、そして、自分が未来から時を越えて来たこと。 「ふうん。にわかには信じ難いわね。その未来からはどうやって来たの?」 「それが分かれば苦労はしないんだけどな。それと、俺にとってはここは過去とは限らないんだよ。俺の知ってる孫策は男だし、他の武将も知将も残らず男だし」 「でも私は孫策という名前を持ってる」 「あぁ。だから正確に言うと、パラレルワールドって言った方が確かかな?」 「パラレルワールド?」 「パラレルワールドって言うのは、簡単に説明できないんだけど………」  語尾を濁しながら部屋を見回し、机の上に数学のテストを広げ、ペンを取り出す。テストの裏の白紙部分にペンを走らせながら説明する。 「こんな風にある一点から世界が分岐して、別の歴史を辿るんだ。川に例えれば解りやすいかな?最初は同じ所を流れていた水が、ある一点を境に別の流れを辿って、別の川になるって感じ」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加