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ん?なんだ柔らかい。ベッドから落ちずに済んだらしい。
大きく伸びをした後、勢いをつけて体を起こす。
………何処ここ?
そんな疑問を抱いたとき、部屋の扉が開き、人が入ってくる。
「あ、目覚めた?良かった。馬から落ちたときはどうしようかと思ったよ。どう?頭大丈夫?」
「あぁ、何とか大丈夫……だと思う」
「曖昧な返事ね。本当に大丈夫?なんか気が抜けたような顔してるけど」
「俺、夢見てんじゃないよね?」
ムニ。
「どう?痛い?」
「いはい」
孫策に両頬を引っ張られた間抜け顔のまま答え、一つの確信を得る。
これは夢じゃないらしい。タイムスリップは現実に起きたのだ。
俺、黒川征夜は、三国志の世界に来てしまったのだ!
そんなことより………、
「ほんはふはん、もう良いでふ」
「でも、なんかこれ楽しい♪」
「困りまふ。もうはなひへ」
「もう、しょうがないな。でもこれで夢じゃないって分かったでしょ」
孫策に散々弄ばれた頬を手で押さえながら答える。
「おかげで夢じゃないって確信が持てたよ」
「さて。それじゃあ早速、貴方の話聞かせてもらおうかな?」
「あぁ、何でも聞いてくれ」
「じゃあ、貴方の住んでいた国のことを教えて?日本、だっけ?」
それから俺は、孫策に自分のことを色々話した。日本のこと、自分のこと、そして、自分が未来から時を越えて来たこと。
「ふうん。にわかには信じ難いわね。その未来からはどうやって来たの?」
「それが分かれば苦労はしないんだけどな。それと、俺にとってはここは過去とは限らないんだよ。俺の知ってる孫策は男だし、他の武将も知将も残らず男だし」
「でも私は孫策という名前を持ってる」
「あぁ。だから正確に言うと、パラレルワールドって言った方が確かかな?」
「パラレルワールド?」
「パラレルワールドって言うのは、簡単に説明できないんだけど………」
語尾を濁しながら部屋を見回し、机の上に数学のテストを広げ、ペンを取り出す。テストの裏の白紙部分にペンを走らせながら説明する。
「こんな風にある一点から世界が分岐して、別の歴史を辿るんだ。川に例えれば解りやすいかな?最初は同じ所を流れていた水が、ある一点を境に別の流れを辿って、別の川になるって感じ」
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